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金鳥の夏/緊張の秋

昨日も欧米の市場では、一時5%を越える程に株価が急落しましたね。NYダウは2日間で$600を越える下落幅となりました。

国連総会に同期して開催されたG20の会合でも、世界経済を覆う暗雲を払拭するような方策は示されませんでした。 債務危機に直面する欧州だけでなく、景気の減速が明確になってきた米国や、拡大基調だった景気に急ブレーキがかかり始めた新興国においても手詰まり状態となっているように感じられます。



Fear gauge enters the red zone
恐怖指標がレッドゾーンに入ってきた


ダメージを限定する為に残されているショック・アブゾーバー(緩衝装置)が僅かな状況で世界経済が2番底に向かって落ち込む中、欧州債務危機のリスクは制御を失う状態に高まりつつある。

信用ストレスの重要な指標として、社債に対する Markit's iTraxx Crossover 指数-又は”恐怖ゲージ”-が木曜日に56ベーシスポイント上昇して857となり、3年前のリーマン・ブラザースの破綻前に見られた危険なレベルに達した。

ソシエテジェネラルは、イタリアとスペインの債務に係る損失へ対処すべく資本増強を必要とするかもしれないという懸念により、パリ市場で9パーセントも下落して銀行株の総崩れを主導した。

取引終盤に欧州中央銀行(ECB)が介入する前、イタリア10年物国債とドイツ国債のスプレッドは新記録となる408ベーシスポイントに達した。 これはLHC Clearnet がマージン(委託保証金率)の引き上げを要求する水準に近く、この要求はギリシャ、ポルトガルそしてアイルランドが救済を求める引き金となったのである。

2パーセント近辺のコア・インフレ率又は連邦議会からの反対を受けて連邦準備制度理事会は決して新たな刺激策を発動しそうも無いのに、彼等が再び量的緩和(QE3)を携えて救済しに来る事を拒否したという事で世界の投資家達は震え上がっているようだ。

全世界的なリスクからの逃避は欧州に最も激しい打撃を与えた。 欧州の当局者達は時間を使い果たしたと、ダンスケ銀行のペーター・ポッシング・アンダーセンは語った。 「金融市場は現在の政策への信頼を失い、経済は景気後退の危機に瀕しています。負のスパイラルを断ち切る為に急進的な行動が必要です。」と彼は語った。

「金融市場のセグメントは機能不全に陥っており、信用へのアクセスは塞がれてしまいました。欧州の政策立案者達は緊急且つ大胆な措置を講ずる必要があります。このような事態が起きるまで、市場は危機に向かってゆっくりだが確実に砕けていったのです。現在の緊縮財政策は、既に危うかった回復の息の根を止める危険を孕んでおり、債務の力学とでも言うべき更に悪い状況を作り出しているのです。」と彼は語った。

ECBが本質的には存続可能なイタリアのような国々から”無制限に”国債を購入すべきである一方、”悪循環”を打ち破る為にギリシャは更に大きな債務救済措置を必要としていると、アンダーセン氏は語った。

最近数週間の厳しい経済指標は”何とかしのいでいた”政策を実行不可能にして弱小国を瀬戸際へ押しやったと、RBSの与信主任であるアンドリュー・ロバーツは語った。 最新のPMI(購買責任者指数)は、9月の製造業の輸出受注が2009年半ば以来最低となる44.8に転落した事を示している。

不吉な事に、中国のPMIデータは、金融危機が深刻だった時よりも更に落ち込んで3ヶ月連続で縮小しつつあるという警告を点滅させており、融資制限が影響し始めた事を示唆している。

「我々は、構造的な落ち込み/不況の中で循環的な新しい下降局面にいるのです。我々はグローバルな協調的金融措置を必要としており、ECBは金利を50ポイント引き下げねばなりません。彼等は7月に金利を引き上げるというひどい間違いを犯したのです。」とロバート氏が語った。

2012年には0.3パーセントという債務の力学によって大混乱となるレベルに急減速すると、IMFはイタリアの成長見通しを引き下げた。 この国は、来年の後半までに€2600億を計上しなければならない。借入れコストが100ポイント上昇する度に財政赤字は€25億増加するのだ。

新興国市場は与信拡大のバッファ(余裕)に近づきつつあり、運営の為に必要な財政的余裕を失いつつあると、IMFが警告した。 中国国内の融資額は、安全なレベルを大きく越えてGDPの173パーセントに上昇したと、彼等は述べている。

IMFは$1.7兆の地方政府債務による”深刻な”損失を恐れており、北京政府がシステムの救済に乗り出さねばならなくなる程にリスクが増大している。 「結果として生じるのは、中国の公的部門債務水準の実質的な悪化であり、将来的な財政刺激策の範囲が狭まる事です。」と彼等は語っている。 中国は(洪水のように)大量の安価な信用の水門を再び開く事で、2回目のグローバルなショックに対応する事はできない。

ECBは最大€2兆までの国債を買い入れると誓約する事で、高まりつつあるユーロ圏の危機を止める力を持っていると、ローマのルイス・ギード大学のジュゼッペ・ラグーザ教授は語った。 「彼等が国債を買う必要はないのです。約束だけで充分なのです。」と彼は語った。

そのように大胆な行動は現れそうにも無い。 世界第3位の規模の-€1.8兆のイタリアの債務をECBが支えるという事で市場を納得させるのに必要となる圧倒的な気迫を見せず、過去6週間に渡って彼等はためらいがちに市場介入していた。

ECBがEU条約の法規を破っていると非難するドイツ大統領のクリスチャン・ウルフ及びドイツ連邦銀行に猛烈に反対されている為、欧州中央銀行は制約されている。

ドイツ連銀はユーロを支える為に8月だけでもバランスシートを€500億拡大したと、ジェフリーズ証券のディビッド・オーウェンは語った。 危機が始まって以来、彼等は流動性供給量を8倍の€4210へ増やし、ECB本体と殆ど同じ規模となっている。

「この地域の債務危機と戦うべく議会が施策法案を通過させているように、ECBは”強固で信頼できる”資金をユーロ圏の銀行と経済へ供給し続けるべきである。」と、IMF専務理事のクリスティーヌ・ラガルデは木曜日に語った。

「ECBは現在も重要な役割を果たしており、果たす事が可能であり、今後も果たし続ける事を望んでいます。」と彼女は語った。

条約を改正する事無く、このような施策をどこまで推進できるかという事については明らかな限界がある。 さもなくば、財政統合という代案に帰結するのだ。 国債購入と銀行の資本再増強はEUの救済基金から支出しなければならないのだが、それは全ての加盟国内の議会によって今年後半に批准されるまで準備できないのである。 欧州は緊張の秋に直面しているのだ。



景気後退が鮮明になってきた米国では、「Japanization(日本化)」とか「US is following Japan's lost decade(米国は日本の失われた10年を追いかけている)」というような経済関連記事が増えているのです。 しかし、私はそのような分析に納得できないのです。

不動産であれ株式であれ、実際の需要(実需)を無視して加熱する人々の強欲さがバブルという現象を作るのですから、それが崩壊した後には最終需要/有効需要と供給能力の間に大きなギャップが生じてしまうのですね。 日本では、不動産バブル崩壊後にバランスシートを大きく毀損させた金融機関へ政府が資本を注入し、90年代半ばの金融危機をしのぎました。 その後、企業/家計は債務の返済に努めるばかりとなったため、不足する民間需要を政府の財政出動によって補ったのですね。 日銀も、低金利政策に加えて量的緩和という非常手段を導入しましたが、最終需要が低迷し続けていたので銀行の融資額は増えなかったのですよ。

一方、低迷する国内の需要とは対照的に、需要が増えていた海外への輸出が日本経済を(かろうじて)支えてくれたのです。 欧米への直接的な輸出だけで無く、電器製品や衣類等の世界の工場となった中国への基幹部品/製造機器の輸出や、同国の建設ブームに乗じた建設機械等の輸出により、僅かながらも日本の経常黒字は維持されていたのですね。

政府関係者が「第14循環」と呼び、経済誌が「いざなみ景気」とも表現する2002年から2007年までの景気は、このような外需に支えられていたのです。 丁度この時期は、欧米で(現在ではバブルであったと見なされる)不動産ブームが起きていたので、日本経済は何とか生きながらえたのです。

しかし、国内では依然として最終需要が低迷しており、賃金の上昇も無ければ物価の上昇も起こらなかったのですよ。 日銀の緩和政策でマネタリーベースを増やそうとも、インフレは起きなかったのです。 国内の需要が低迷するので、国内の事業を拡大すべく積極的に投資するという企業が少なかったばかりか、激化するグローバルな競争に負けまいと労務コストの圧縮(減給、解雇、採用枠削減)に取り組む企業ばかりだったのです。 伸び悩む賃金や雇用環境の悪化が更なる需要の低迷を招くという悪循環に陥っていたのですね。

高齢化の進展なども需要の低迷に少なからず影響しているのだと思いますが、このような経済の構造的問題を解決せぬまま、橋本政権/小泉政権下で2度も試みた財政規律への取り組みが景気回復の腰を折ってしまったのです。

バブル崩壊後の経済運営の混乱という点では、現在の欧米の状況が以前の日本に類似しているようにも思います。 「積極的な財政出動」を主張する米国と、債務危機へのヒステリックな反動で拙速に進めた「緊縮政策」が更なる景気の悪化を招いた欧州の状況は、上記のような日本の指導者達の混迷を想起させてくれるのです。

上記のように、「失われた10年」と揶揄されていた当時の日本は、辛うじて外需(欧米/新興国のバブル)に支えられていたのです。 現在の欧米の経済危機及び近い将来に発生すると予想されている新興国のバブル崩壊に対しては、それを補う最終需要が地球上に残されていないのですよ。 ですから、当時の日本と現在の欧米の金融危機とでは状況が異なり、全くの手詰まり状態になりつつあるのではないかと思うのです。

2008年の金融危機の後で積極的な金融緩和と財政政策を推進した米国でも最終需要が増加していないので、マネタリーベースは増加したものの金融機関の融資額は増えていないのです。 元々内需の弱い中国等への輸出を当て込んでいたとしても、グローバルな競争の中で米国企業は製造拠点を海外へ移転していた為に雇用だって増えなかったのですよ。


このような閉塞状況の中、「全世界で低迷する最終需要を飛躍的に伸ばす手段として大規模な戦争の企みが進められている」というような陰謀論も飛び交い始めているのです。以前から欧州の債務問題を指摘していた Bob Chapman は、様々な Alternative Media への登場機会を増やしているのですが、最近はこの種の「戦争の陰謀」を主張するようにもなってきたのです。 「ガザへ向かう補給船を攻撃されて以来イスラエルへの反発を強めるトルコに対し、イスラエルとギリシャが手を組んで戦争を始める。」と彼は主張するのですが、根拠は怪しいのです。 トルコもギリシャもNATOに属する為、欧州各国としては何れにも加担せずに戦火の拡大を傍観するとも説明しているのです。


欧米の経済情勢やアラブ地域の政治的混乱が注目を集めがちですが、イスラエルでも急激なインフレで国内情勢が不安定になっているのですね。 インフレの原因の一つが、積極的なパレスチナへの入植政策なのです。 そのパレスチナは、今回の国連総会で「国家」としての承認を求めようとしているのですが、唯一イスラエルを擁護する米国が拒否権を発動させると牽制しているのですね。


自然災害や経済/金融の危機だけでなく、このように世界は地政学的にも不安定な状態となりつつあるように思うのですが、「戦争の企て」のような陰謀論については、国連総会後の情勢を確認した上で考えてみるのです。

次回に続く・・・



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