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草莽の妄想

私は低俗なTV番組を観ないのですが、年の瀬が押し詰まる中、広告料収入の減少に喘(あえ)ぎつつ二流のお笑い芸人を招いて低予算の年末番組を垂れ流す民法各局の立ち位置に日本経済の構造的な危うさを危惧する人は少ないのかもしれません。

翻って、日本経済の先行きを憂える方々の警告は、低俗な年末年始のTV番組に興じる大衆に理解されないのでしょう。



Shinzo Abe’s Monetary-Policy Delusions
安倍晋三の金融政策の妄想


ニュー・ヘブン - 中央銀行を政治に利用する動きが衰える事無く続いている。 安部晋三及び日本の自由民主党 - 二つの失われた十年に加えて現在も続いている停滞に日本経済を陥れた政治システムの支柱 - の復活は、正に証しとなる最新の事例である。

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日本の最新の選挙は、日本銀行の金融政策方針に関する安部の見解を批判的に見ていた。 臆病な日銀は積極的な相方達、連邦準備制度理事会や欧州中央銀行から学ぶべきであると彼は主張した。 正にFRB及びECBが彼等の非伝統的で積極的な量的緩和(QE)を通じて危機を救った様にと主張し、今や日銀が同じ事を行う番であると安部は信じている。

確かに、彼は自分のやり方を進める様に見える。 4月の白川方明(まさあき)日銀総裁の任期満了により、安部は彼の意を体する後任者を - そして二人の副総裁も - 選ぶ事が可能となるのだ。

しかし、それは上手くいくであろうか?。 今や実験的な金融政策が今日(こんにち)の危機以後の時代における標準的な運用手順として広く受け入れられている一方、その効果は疑わしいのである。 世界金融危機の余波の中で世界が底を打ってから4年近く、QEの影響は著しく非対称であった。 大規模な流動性の注入は、凍結した与信市場を融解して最悪の危機を阻むのに効果的であった一方、- 2009‐2010年におけるFRBの初回のQEの果たした役割を見れば明らかな様に - その後の努力は通常の循環的な回復に近い何物をも巻き起こしていないのである。

その理由を推し量るに難くない。 民間及び公的部門のバランスシートへの深刻なダメージによって枷(かせ)を嵌(は)められる中、政策金利がゼロ又はそれに近い値において、バブル後の経済は伝統的な「流動性の罠」に嵌まりこんできたのである。 新たな債務を想定して総需要を喚起する事よりも、彼等は危機以前に積み上げられた巨額債務の返済に焦点を当てているのだ。

アメリカの消費者の悲しい事例は、これが如何に作用するかという事の古典的な事例である。 住宅及び与信の - 危機へ至るまでの数年間、過去最高の個人消費のどんちゃん騒ぎに油を注いだのだ。 バブルが弾けた時、過剰な消費習慣を再開するどころか、当然の如く一般家庭はバランスシートの修復 - 言うなれば、債務の返済と個人貯蓄の再構築に固着したのである。

実際、約$3兆 - 恐らく来年には$4兆へと向かうであろうが - へと危機後のFRBの資産を3倍にするという前例の無い措置にも拘わらず、米国の消費者は嘗て無い程に後退したのである。 2008年の初めからの19四半期において、インフレ調整後の消費支出の年率換算成長率は平均で僅かに0.7% - 2006年までの11年間に記録された3.6%という増加傾向からほぼ3パーセント低い値なのだ。

ECBも又、彼等の懸命な量的緩和に満足する理由を持っていないのだ。 €3兆($4兆)を僅かに超えるまでに彼等のバランスシートを倍増させたにも拘わらず、欧州は4年間で2度目となる景気後退へと戻ってしまった。

危機の為に疲弊してバランスシートの制約がある経済をジャンプスタートさせる能力が限られているだけで無く、QEは金融政策と財政政策の境界を曖昧にする重大な危険を冒すものなのだ。 財政当局によって発行された国債を購入する中央銀行は、借入コストに関して市場に委ねられた秩序を相殺してしまい、公的部門の浪費を効果的に助成する事となってしまうのである。

残念ながら、特に2000年代初めにおける日銀のゼロ金利及びQEによる期待外れな経験という - 自らの多くの教訓を日本は忘れてしまった様である。 しかし日本は又、破綻した銀行と多くの非金融系企業の生命を維持する為に当局が可能な限りあらゆる事を行った - 所謂(いわゆる)失われた10年の一つ目である - 1990年代の光景も見失ってしまったのだ。 時間がゾンビの様な企業を復活させてくれるという誤った希望により、彼等は人工的な生命維持装置の上で存続されたのである。 銀行部門が再編されて企業のリストラが奨励され、バランスシートの修復と構造改革の長く険しい道のりにおいて日本が進歩を遂げる事となったのは、漸く同10年間の終盤だったのである。

米国の当局は日本の様な誘惑に屈した。 量的緩和から、前例の無い救済の為の過去最高記録となる連邦政府予算の赤字まで、バランスシートの修復及び構造的な調整の痛みを覆い隠すべく、彼等の権力において全てを実行したのである。 その結果、アメリカは彼等自身の時代のゾンビを生み出したのである - 今回の場合は、ゾンビ消費者であるが。

日本と同じ様に、アメリカのバブル崩壊後の治癒は限定的であった - FRBによる特大の流動性の注入にも拘わらず。 2012年第3四半期における家計部門の債務は収入の112%であり、- 過去最高となった2006年から低下したものの、依然として20世紀の最後の30年間における標準的な75%より40パーセント近く高いのである。 同様に、個人貯蓄の割合は2012年11月までの4カ月間で僅か3.5%であり、1970‐99年の平均である7.9%の半分未満なのだ。

欧州においても同じである。 ECBの超積極的な行動は、同地域において長らく待ち望まれている構造改革を成し遂げる道筋において僅かしか達成していないのだ。 危機で疲弊した欧州周辺国の経済は、依然として持続不能な債務負担と深刻な生産性及び競争力の問題に苦しめられている。 そして、断片化された欧州の銀行システムは、地域内の連鎖における最も弱い繋がりの一つのままである。

これが、安部が日本の為に本当に望んでいる「治癒」なのだろうか?。 現時点で日本経済が必要としている最後の事は、構造改革に逆行しているのだ。 なおも、FRBとECBの誤った方向に向かう足跡の踏襲を日銀へ強制する事により、安部と日本は正に危機に直面しているのである。

世界の主要国の中央銀行 - FRB,ECBそして日銀 - による巨額の流動性の注入は、各々の実体経済の牽引を達成しないと同時に、バランスシートの修復及び構造的な変革も促進しないのである。 それは莫大な量の過剰流動性で世界中の資産市場を水浸しにしてしまうのだ。 彼等が行く先に、避けようも無く次の危機が続く事は運命付けられているのだ。



日経ビジネス(オンライン)は Project Syndicate の記事の和訳文を時折掲載してくれるのですが、元記事の掲載から数週間の遅れがあるだけでなく、私が面白いと思う記事の和訳文が常に掲載される訳でも無いので、あまり期待していないのです。

Project Syndicate には錚々(そうそう)たる面々が執筆してくれるのですが、如何せん、執筆者の視点は「経済」だけなのです。 経済も含めた社会構造の変革が必要と感じている私個人としては、少し物足りないのです。


次回に続く...



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年越しの借金は..

本邦の馬鹿メディアの方々の蒙昧な報道はさておき、我が国の政権に返り咲いた政党が掲げる危うい主張を懸念する欧米の視点について昨日の稿(「何かを見落としている」)で整理しましたが、新政権中枢に招かれた政治家のセンセーの発言に動揺する市場の例としてユーロ/円のグラフを掲載しました。

「小学生のサッカー」の如く殆どの馬鹿メディアの方々が報道するドル/円ではなく、私がユーロの値動きを引き合いに出したのには理由があるのです。



Another Flashing Red Light: Euro Liquidity Shortage Leads To First ECB Sterilization Failure Since November 2011
もう一つの点滅する赤い光:ユーロの流動性不足は、2011年11月以来で初めてとなるECBの不胎化の失敗に繋がっている。


ECBの本来の債券貨幣化プログラム(SMP)は今や消滅しただろうし、使用されない限り有効に機能する(スペインを見てみろ)不思議な OMT に置き換えられたが、その後遺症は残存している。 具体的には、最後に確認した時点で€2085億程の量に蓄積されていた SMP 購入債券の週次の不胎化に SMP の後遺症が現れているのだ。 俺達が何故こいつを持ち出したかって?。 何故なら、買い替え対象となる周辺国の国債の全量を不胎化する事に対する十分な需要及び興味を探し出す事にECBは数時間前に初めて失敗したのであり、その代わりに、今年の最低となる僅か43の応札者を見つけて週次の総割り当てとなる€1976億を「不胎化」する事が出来ただけなのさ。 最後にECBが不胎化操作に失敗したのは?。 2011年の世界中の中央銀行による協調的な銀行救済の1日前となる2011年11月29日だぜ。

言い換えるならば、旧大陸の銀行が大きな流動性不足に突然直面し、欧州の状況が「悪い」から「もっと悪い」へ向かっていた去年の様であるのだが、それは、欧州の銀行自身が「米ドル建ての流動性では無く、ユーロ建ての - 大量の流動性を必要としている事に突然気付いた」事を述べた昨日の俺達の記事「限界貸出機構における1年ぶりの利用量の急上昇により、年末のユーロの本国送還を確認できる。」の全ての読者にとってニュースとならないだろう。 案の定、この問題が本当にどれほど悪いかという確証を俺達は今日掴んだのだ。

しかし事態を非常に悪化させたのは、欧州の銀行が€1兆もの大量の流動性の急増を獲得した LTRO1 及び 2 の後の世界では、今日の様な不胎化の失敗が起きる事が想定されていないという事なのだ。 そして、実際に起きたのさ。

これは、この1年間の週次の不胎化の歴史がどの様に見えるかという事だ。 明らかなのは、これが単なる年末の化粧買い的な出来事だという俺達の推測にも拘わらず、2011年11月の前回の同様の失敗以降は応札率のパターンに季節性が全く無く、その代わり実質的に1年前から直線的となっていたという事だ。 必要量をカバーする十分な入札が無かったという事になるので、右軸(応札率)において 1.0倍未満というのは全て不胎化の失敗を意味するのだ。

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流動性が十分であると告知する事についてのECBの劇的な失敗があった前回、2011年11月の事を WSJ がどのように記述していたかというものがここにある:

銀行は、ユーロ圏の激化する債務危機の中で現金を溜め込んでいる事をデータが示唆している。

目標の2035億ユーロを下回り、ECBは週次処理において1941.99億だけをはき出したのである。 目標額は、ユーロ圏の政府債券を二次市場で買い取るというECBのプログラムの元での購入総量に等しい。

掃き出す処理においてECBが目標を達成できなかったのは5月以降で初めてであり、2010年にECBが債券購入プログラムを開始してから僅かに六回目の事である。 それは又、ECBが8月にプログラムを改定して以来、掃出し処理に失敗したのも初めてである。

担保に関する銀行の懸念が彼等の現金を以前とは異なる方法で使用する様に促したのだと、クレディ・アグリコール CIB の金利ストラテジストであるピーター・チャットウェルは語った。 現在、銀行は「[財務省の]債券が売り出され、それらがECBの中で担保として使用する事ができる時にECBへマネーを与えたくない」のかもしれない。
  ...
失敗した処理の発表を受けてユーロは対ドルで下落し、イタリア国債の入札の後で火曜日の午前中に上昇した分を戻してしまった。


十分皮肉な事に、本日のユーロは不胎化失敗の余波の中で上昇したのだ。

それは二つの事を意味する:

i)以前に行ったのと同様に、市場参加者達がこの問題を無視する事を期待して国際決済銀行がユーロを上昇させるべく積極的に操作している(ここに資料がある)か、又は、

ii)何度も俺達が推測した様に、ユーロの急上昇は、欧州の銀行がユーロの流動性を調達すべく資産の本国送還を加速している事の作用以外の何物でも無い。

勿論、上昇する事により、EURUSD は全ての関連するリスクの組み合わせを引き上げる事となり、そして世界の市場を押し上げるのだ。 悲しいかな、これは全ての間違った理由の為に起きるのであり、(そのクレジット・スプレッド・リスクで定義される)銀行の現在の存続可能性が低い程、銀行の損益が良いという、四半期毎の DVA/CVA の戯言(たわごと)を俺達に思い出させてくれるのさ。

舞台裏で起きている事は一部の者を混乱させている為、DE Shaw または GETCO algo は未だに欧州の流動性不足をリスク・オンのシグナルであると解釈しているのだ。

それは、次に、この市場が如何に全くの茶番となってしまったかを再度示しているのさ。



昨年末は欧州におけるドル資金の流動性が問題とされていた様に記憶しているのですが、上記でも引用されている前日の Zero Hedge の記事(「限界貸出機構における1年ぶりの利用量の急上昇により、年末のユーロの本国送還を確認できる。」)を読んだ時に、欧州の銀行(含ECB)の動向がアヤシイと思ったのですよ。

欧州銀行の、ECBの限界貸出ファシリティ(機構)からの借入額の急増は、ハロウィーンの頃から顕著となっており、継続的に上昇していたユーロの不思議な「強さ」と関係している様にも思うのです。(「Trick or Treat」)

さてさて、悲観論が飛び交った今年前半とは対照的に、ECB総裁の口先介入も奏功して7月以降の高揚感(Euphoria)を継続している様に見える欧州の債務危機ですが、年明け以降にはどのような展開を見せてくれるのでしょうか?。 (さすがに、LTRO 3 というオプションは無いのでしょうけど)


次回に続く...



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何かを見落としている

市場参加者達だけでなく、彼等が注視している政治家のセンセー方の間にも相変わらず浮かれた雰囲気が続いている様です。

ロイター より
最近の株高、安倍政権への期待反映=麻生財務相
[東京 28日 ロイター] 麻生太郎副総理兼財務・金融・デフレ脱却円高対策担当相は28日午前の閣議後会見で、最近の株高について「安倍内閣、自民党政権の経済対策等々に期待が持たれている部分が大きいのではないか。政策や予算など、法律が何ひとつ成立していない段階で、(景気が)良くなるだろうという気分の問題」と分析した。


皆さん、何かを見落としているのかもしれません。



Arsonists Grab Matchbox in Japan
日本において放火犯がマッチの箱を手にした


選挙区への予算のバラマキの達人が財務大臣となる

安部晋三にとって、「日本を繁栄させるべくインフレを起こす」ように促す目的において、日本銀行の名目上の支配権を理事会から奪おうとするだけでは不十分なようである。 印刷機を回す事で無から何かを得られるという誤った信念は勿論世界中に根付いているが、高齢化と人口の減少がすすむ社会において、その様な選択的政策を進める事は日本にとって特に悪い事である。 我々が以前に述べた様に、日本国民にとってインフレは全く必要の無いものなのだ。

現行世代において金利が最低水準にある中でさえ、経済規模に比較すると先進工業国の中で既に断然として最大であり、もっと重要な事に、政府の税収規模に対して最もコストのかかる政府の債務の山へ、安部は更に(債務を)加えたいと望んでもいるのだ。

安部は今回、この目的の為に、元首相であり、ブルームバーグが我々に伝えてくれた様な、「選挙区への予算のバラマキ」という古い手法を持つ72歳の麻生太郎を、この3年間で6人目の財務大臣に任命したのである。

麻生はセメント会社の御曹司であり、つまり彼は、何年にも渡って日本の「間違った資本の為の人工的生命維持」政策の常に主要な受益者であった業界と結びついているのだ。 何処にも繋がらない橋の新しい大臣と呼ぶ者もいるかもしれない。

ブルームバーグによると:

セメント業界の大物の息子であり、首相であった時には選挙区への予算のバラマキの王者であった麻生太郎は、この3年間で6人目となる日本の財務大臣に就任し、世界第3位の経済大国における財政刺激策の拡大を主張している。
72歳の麻生は、安部晋三首相の政府の中で副首相及び金融担当大臣も務めると、内閣官房長官の菅義偉は昨日東京で述べた。 甘利明が経済産業大臣に任命される一方、岸田文雄が外務大臣となる。

財務大臣の最初の仕事は、3四半期連続で縮小すると予測されている経済を刺激する為の「大規模な」補正予算という彼の党の公約を実現する事になろう。 同国が国内総生産の2倍を超える債務と格闘する中で、財政健全化を回復する新しい計画を麻生が求めている様に、債券市場における如何なる暴落も回避する事が課題となるであろう。

「麻生の課題は、国債利回りの上昇を招く事無く拡大的な財政政策を追求する事でしょう。」と、東京に拠点を置く SMBC 日興証券の債券ストラテジストである岩下マリは語った。 「自民党は債券市場にあまり関心を払っていない様に見えます。 警告として格付け会社が格下げの信号を発するかもしれない可能性があります。」


自民党は、支出及び債務の拡大を抑制する為の自らの「枠組み」を確立しなければならないと、内閣が明仁天皇より任命受けた後で今朝早くに麻生が記者団へ語った。 3月31日に終了する会計年度において新規国債発行を44兆円($5140億)に制限するという、前政府が設けた制限に固執しないと麻生は語った。

「過去3年の間、日本がデフレを克服する事に完全に失敗した事は明らかです。」と麻生は語った。 「我々の優先課題は、経済が改善しているという事を日本国民が認識できる様にする事です。」

日本の国債リスクは、12月16日に衆議院選挙で勝利した自民党が政権を担うという仮定の段階から上昇した。 情報提供会社の CMA によると、昨日の東京時間3:04pm時点で、5年物国債の不払いに対する保証のコストは11月13日の71.5ベーシスポイントから14.5ベーシスポイント上昇して86ベーシスポイントになった。 それは、9月26日以降で最も高い終値となる軌跡を辿っている事をデータが示している。


(強調追加)

我々が幾度も述べた事ではあるが、もう一度述べねばならない:これまでも、現在も、日本に「デフレ」は全く存在しないのである。 バブルが弾けた以降、バブルの期間よりも遥かに低い割合ではあるものの、日本の実際のマネー・サプライは毎年増加してきたのである。 これは、生産性の向上がマネー・サプライの増加を上回ったこれらの期間において、注目に値する緩やかな価格の下落に繋がったのである。 勿論、全てのこれらの変化している要素間の繋がりは全く機械的なものでも無いので、これは「経験則としての」表現である事を付け加えておく。 先行するものと遅行するものがあり、何れの効果も線形では無く、その時々において異なるであろう多くの他の要素によって影響されるのである。 しかし経験則として、これは、インフレ、生産性の向上そして価格が原理的に如何に連動しているかという確かな事なのである。

だから、印刷機による「治癒」の必要性は無いのである。 しかし、更なる債務を生む事に関して政策を展開する余地がほぼ無限にあると麻生及び安部は考えている様に思えるという、更に驚くべき事があるのだ。 これまでに行われた全ての刺激策予算と同様に、この債務の生成による支出が無駄に終わるだけにとどまらず、既に存在する過大な債務に対する優先度を上げるどころか、それを下げる事となるのである。 この時点で債務の山を更に増大させる事により、不可能な大詰めである事が徐々に明らかとなっている力学を代替する最後の機会を日本が全く失ってしまうかもしれないのである。

退屈する市場

確かに、これまで市場は過剰に心配していない。 以下に見られる様に、5年物日本国債の CDS は実際最近になって幾分上昇したものの、これまでのところスプレッドは依然として最近のレンジの下限近くにある。 しかし、新政府からの積極的な言い回しが発せられるという観測の中で不安は増えそうである。

特に、最近安部晋三は進行中の「通貨戦争」を引き合いに出してもおり、世界中のフィアット通貨の篝(かがり)火に対して今こそ日本が焚き付けを加える番であると彼が考えている事を表明している。 実際、それにガソリンを注ぐというのが更に適切な表現かもしれない。(これについて更に以下に述べる。)

市場において、非常に様々な度合の不信感の停滞を見て取る事ができる。 CDS スプレッドが依然として不活発なだけで無く、全く影響を受けず上場基調にある最近の高値付近で日本政府の国債市場が落ち着いた動きを続けているのだ。 日本国債の市場は基本的に安部のインフレ施行の宣言を退屈に受け止めており、- これらの考えに基づいて彼がやり過ぎると本当に信じてはいないという事が明らかである。

それは円や日経の動きとは全く異なるのだが、むしろ現在までのこれらの市場は短期的に行き過ぎている様に見える。



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アイルランド、ベルギー、フランス及び日本(白線)の5年物 CDS。 81.09ベーシス・ポイントという値で、日本の債務の CDS スプレッドは4ヶ国の最低であり、過去1年間における最高値から65ベーシス・ポイント低いままである - クリックで拡大。



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過去5年間における継続的な日本国債先物契約の週足りチャート。 安部の政策発表の結果として、これまでのところ債券市場は全く変化点を失ってしまい、顕著に関心が消失した事を示している - クリックで拡大。



これまでのところ、全て良好で安部が提言する政策の結果として何の不都合な結果も起こり得ないと市場が考えている様に見えると表現しても間違いでは無い。 そして、債券市場が間違っているか、安部は吠えるだけで咬みつかない(見かけだけ)かの何れかである。 少なくとも日本政府は、殆どを同国民から借り入れているのだ。 嘗てスティーブン・ライトが述べた様に、悲観的な者達は通常取り返そうと期待しないので、彼等からマネーを借りるというのは常に良い考えなのである。

鍋、ヤカン

彼の提案の視点において今週笑えたのは(米国において進行中の「財政の崖」の喜劇に為に、今月のお笑い大賞はまだ保留しているが)、過剰なマネーを印刷している他の中央銀行に対して祝日の間に安部晋三が不満を述べていた事である。 更に笑えるのは、全ての人々を代表して(誉れ高く全ての発行済み英国債の25%を保有する)マービン・キングが、同じ通貨の話題について彼の「懸念」を表明した事である:

日本の次期首相は益々緊迫する世界の通貨市場に射撃を始めましたが、円の弱体化を確実なものとする事により自国通貨を切り下げようという他国政府の試みから同国が自らを守るとも述べているのです。」
安部晋三の要求に対し、各国の間の緊張を高める可能性のある通貨の争いに世界の経済政策立案者達が巻き込まれる事になるリスクがあると、イングランド銀行総裁のマービン・キングを含む他の者達は警告している。

自らの通貨を安くしようとの米国及び欧州による動きと安部が説明した事へ対抗するよう、日曜日に彼は日本の中央銀行へ要請し、ドルに対して¥90近辺 - 金曜日午後の¥84.26から低下して月曜日午前中のアジアでの取引では¥84.38だった - の水準の円は日本の輸出業者達の利益を支えるであろうと指摘したのである。 祝日の為に月曜日の東京市場は閉じていた。
「世界中の中央銀行はマネーを印刷し、彼等の経済を支援すると共に輸出を増加させているのです。 アメリカが典型的な例です。」と、膨大な量の国債や他の資産の購入によって市場にドルを溢れさせるという連邦準備制度の政策を引き合いに出しながら安部が語った。
「もしこの様に進展すれば、円が強くなる事は避けられません。 これに抵抗する事が不可欠なのです。」と、水曜日に首相となる安部は語った。
今月のインタビューの中で、「2013年は、多くの国々が自国通貨のレートを押し下げようと試みるのを実際に私達が目にする挑戦的な年になると私は思います。 それは懸念に繋がるものです。」とキング氏は語った。


(強調追加)

もし試みても上手くいかないであろう。 安部は、更にもう一人のコメディアンの成り損ないであり、明らかにキングも同じである。 彼等は舞台の上におり、それは間違った事なのである。 阿部は、他の中央銀行が過剰なマネーの印刷を停止する事を要求している訳では無く、- むしろ彼は、「悪に悪で応じるのは正しい」という主題の派生形として、彼等を上回る程に日本銀行に印刷して欲しいのである。

円を取り引きしている人々は、安部が成功する - これは未だ堅実なデータに裏付けられていない(日本の真のマネー・サプライは -前年比で4.3%と比較的活発に伸びた一方、前四半期には年率換算で実際に1.6%縮小したのである)が -、と明らかに信じている。 前述したとおり、投機家達は現在、円の最近の下落傾向の継続へ過大に賭けている為、純粋にセンチメント及び市場構造の基本に基づくならば、それは益々実際に長続きしそうも無い様に見える。



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過去1年間のドル円のマネー:記録に近い円先物のショート・ポジションを投機筋が積み上げた事で、最近の急激な円の下落が見られた - クリックで拡大。



その一方、最近の上昇の後で「過大評価」と呼ぶのは不適切であろうが、日経指数は短期的な買われ過ぎとなっている。 最近の上昇は殆ど弱い円の反映である為、それは世界で最も安い市場の一つのままである。 しかし確かに、長期的な円と日経のチャートの何れも、最近の動きは一度引き戻された後に更に継続するかもしれない事を示唆している。



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過去5年間の継続的な日経先物のチャート。 最近の上昇は非常に強いが、それは依然として長期的な構図からは単なる一時的な上下動のままである - クリックで拡大。



我々の読者達ならば知っている様に、最近の上昇の直前に我々は日本の株式市場に関して前向きに見ていたのであるが、それは主として三つの要因に基づいていたのだ:

バリュエーション、センチメントそしてボラティリティである。 一つ目は、長期的な日本の株式の選好を主張するものであり、後の二つは近い将来の上昇の始まりを主張するものである。

これまでのところは良好であるが、その上昇が明らかに弱い円によって促進されたという事を我々は好ましく思っておらず、- それは市場が上昇する上でとても良い理由だとは言えず、失望へ向けて最近の動きが益々危険になっているのだ。

或いは、他の言葉で云うならば、- 2度目となるが、我々のお気に入りの実際の立芸コメディアンの言葉を引用する(骨の髄からの直線野郎の達人である、スティーブン・ライト):

「全て上手くいっている様に見える場合は、明らかに何かを見落としているのさ。


チャート:ブルームバーグより



我が国のメディアでは、「円安による輸出企業の業績改善を期待して株価が上昇している」という類の解説が多く見られますね。 ところが、日経株価指数等を主導する外国人投資家(海外の機関投資家)達の視点からは、円が安くなった場合に円建て資産のポートフォリオ比率が低下する為、円建て資産(株式等)を買い足すという力学が働くだけなのですよ。


貿易収支が黒字の時に円が安くなるのは国富の増加となるのですが、慢性的な貿易赤字に向かっているかもしれない現在の状況において、円安はエネルギーや食糧の輸入コストを増大させる事となり、総合的には日本経済にとってマイナスに作用すると思うのです。

加熱する先行期待により株価やドル/円が急激に上昇した事を懸念したのか、麻生財務相は「急激な円安に対しても為替市場に介入する可能性があるよ」という主旨の発言をしたようですね。 東京株式市場は既に年内の取引を終了した後でしたが、欧州勢が取引きを始めていた為替市場は冷水を浴びせられた様に反応しました。

Aso_EURJPY_Plunge.jpg
(麻生発言で17:00過ぎ頃から急落したユーロ/円)


次回に続く...



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心緩めて

メインテナンスの為に昨日から本宅に滞在しているのですが、寒さを堪えてまで庭の手入れをする気は起きないのです。

久しぶりに灯したストーブの上にヤカンを乗せ、暖かな室内で静かな時を楽しむのです。



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(幼少の頃のバーナンキ議長?)





次回に続く...



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金属の冷却作用

新しい世代へ権力を移行しつつある中国では、累積する地方政府/国営企業の債務を黙殺する様に再び景気浮揚策としてのインフラ投資に力を入れている様ですが、虚勢(bluff)を張る余裕も無い欧州の経済状況は、ブームに浮かれていた産業に大きな打撃を与えているのです。



Mittal and Vale take $8.5bn battering
ミッタルとヴァーレは$85億の打撃を受けている


欧州内の弱い経済状況の中で、二つの最大手金属グループであるアルセロール・ミッタル及びヴァーレは、合計で最大$85億となる減損処理の追加を余儀無くされてきた。

売上で世界最大の鉄鋼メーカーのアルセロール・ミッタルは、第4四半期の会計において約$43億の「のれん代」の減損処理を行うと金曜日に語った。

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億万長者のインド人であるラクシュミ・ミッタルに率いられ、そのプラントの一つの将来に関するフランス政府との厳しい争いを解決したばかりの企業は、「欧州における弱いマクロ経済及び市場環境」を非難した。 欧州における鉄鋼需要は今年8%下落し、2007年からの累積下落幅が29%になったと同社は述べた。 欧州は、昨年の同社の総粗鋼生産高のほぼ半分を占めたのである。

「この弱い需要環境、そしてそれが短中期的に続くだろうという予測が、基礎的な欧州事業の評価に関するキャッシュ・フロー予想の下方修正に繋がったのです。」とアルセロール・ミッタルは述べた。

今年の初めの9カ月間に、アルセロール・ミッタルの主要な欧州プラントは$8億2千3百万の累積営業損失を計上した。

一方、市場価値において世界第二位の鉱山会社であるヴァーレは、ブラジルにおけるフェロニッケル事業及び欧州におけるアルミニウム資産に関連して$42億の減損処理を行ったと木曜日の遅くに発表した。

その悪化は「フェロニッケルに対する現在の市場環境」を反映しており、ブラジルにあるオンカ・プーマ鉱山及び精製プラントの炉を再構築する必要がある、と同社は述べた。

欧州におけるアルミニウム価格の「下向きの不安定性」とマクロ経済の不確実性により、ノルウェーのアルミニウム製造事業者のハイドロに対する22パーセントの持ち株の価値の一部を損失処理せざるを得なかったと同社は付け加えた。

世界最大の鉱山・金属グループが一部の主要コモディティの不調な見通しに取り組み、資産価値を押し下げる中で、その動きは同社による減損び償却の段階を予兆しているのかもしれない。

BHP ビリトン、リオ・ティントそしてアングロ・アメリカンの様な大きな鉱山会社が彼等の資産ポートフォリオを組み替える中で、今年も下落する価格と上昇するコストによって同セクターの収益性が搾られると見られている。

金曜日の後場の取引においてアルセロール・ミッタルの株は2.5パーセント下げて€12.87となった。 彼等はこの一年で6パーセント下落したが、鉄鋼セクター不況の前の2008年には€60以上の価値があったのだ。

のれん代というのは、対象企業の識別可能純資産の価値を買収価格が上回る時に作られる楽観的な資産である。

企業の将来的業績への期待によって前回報告された価値が依然として正当化されるか否かを確認する為、国際財務報告基準の会計規準は欧州で上場されている企業に年次テストを求めている。

償却の前には、主に2006年のミッタル・スチールによる欧州鉄鋼メーカーのアルセロールの€269億の敵対的買収で生じた$124億ののれん代を賃借対照表上に保持していたと、アルセロール・ミッタルは述べた。

米国の投資銀行であるフーリハン・ローキーの調査によると、経営陣が過去の買収を支持した楽観的な予測を再考せざるを得なくなり、上場されている欧州の大企業ののれん代の償却は2011年に€760億へ上昇した。



ミッタルが今後の業績見通しを金曜日に発表したので、Telegraph でも同じ様な内容の記事を掲載しているのです。(ArcelorMittal to take $4.3bn charge amid French woes and Europe's debt crisis

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